国と地方公務員給与比較のラスパイレス指数の矛盾
2013.05.16
比較方法に矛盾と不公平
地方公務員の給与削減に使うのはさらにおかしい
国と地方の公務員の給与水準について、総務省は平成24年4月1日にラスパイレス指数を公表しました。調査は、東日本大震災の復興財源の確保などのため、2年間に限って実施されている給与カットにより一時的に低下した国の給与水準を基礎としたため、ほとんどの地方自治体は国よりも高い数値となり、地方公務員給与全体では国より7%上回っている(全団体平均)との結果となりました。
この結果をもとに政府は地方公務員給与を今年7月から平均で7.8%削減するように地方自治体に求め、その額に相当する地方交付税を削減することを決定しました。この決定について地方自治体の首長や連合など労働組合は、地方公務員の給与は各自治体体が条例として議会の承認を得て自主的に決定するものであり、国による強制的な削減強要と自治体が自由に使うこととなっている主要財源の地方交付税を一方的に削減することは地方自治の本旨を揺るがすものとして反対しています。
ラスパイレス指数については、比較方法に矛盾があり、不公平であるとの指摘も以前から行われています。たとえば大阪市のホームページには下記のような記載があります。(●の項目)
● 現行の国と地方の比較の矛盾
● 比較対象の違い
まず、国の示すラスは、多くの国家公務員に適用される「行政職俸給表(一)」(以下、「行(一)」とします。)の適用者とそれに相当する地方公務員とで比較することを前提としています。そのため、地方側は1年目の係員からトップである局長(部長)に至るまでが比較対象であるのに、国では本省課長級までが比較対象となり、その上位の事務次官や局長、審議官など800人を超える本省次長以上の幹部職員は「指定職俸給表」というより高い給与水準の俸給表が適用されるにもかかわらず比較の対象とされません。
また、国家公務員の在職期間の長期化に対応するため平成20年度から導入された「専門スタッフ職俸給表」適用者(現在約200人)についても、概ね本省課長から課長補佐クラスの給与水準が設定されているにもかかわらず、「行(一)」からは外れるため比較対象となっていません。また、この「専門スタッフ職俸給表」については現在、指定職並みの高水準の給与設定を検討されているとも聞いています。
● 早期勧奨退職の慣行
さらに、国では長年にわたり幹部職員に対する早期勧奨退職の慣行があります。各府省のあっせんによる民間企業や特殊法人などへの再就職(いわゆる「天下り」)が行われてきた結果、これら幹部職員は定年を待たずして勧奨退職し、その後も高い所得水準を維持、上昇させているにもかかわらず、当然のことながら地方との比較対象からは外れているわけです。
人事院の年次報告によると、この慣行は少なくとも平成15年ごろまでは50歳前後から行われており、いわば一種の人事異動的措置として過半数の幹部職員が応じてきたという指摘もあります。国も「天下り」批判を受け、その後、勧奨退職年齢の引き上げや在職期間の長期化への取組みがなされてはいるものの、平成22年まで過去10年間の「行(一)」の勧奨退職者及び指定職の離職者の累計は23,000人にも及ぶため、本来であれば、これらのうち、未だ定年年齢に達していない勧奨退職者については今回発表されるラスにカウントされるべき人たちと言えます。
上記の大阪市ホームページの記載事項でも明らかなように、ラスパイレス指数を出すための比較において、国は全体の職員を対象とせず、年齢も低く、幹部になっていない若手職員を中心としている点や、一定年齢になれば地方公務員とは比較にならないほどの高い給与が保障される関係機関などに天下りし、実質的な生涯賃金では、地方公務員よりはるかに高くなる現実が反映されていないといえます。
下記の表は総務省が発表した調査結果です。
〇 参考値は、国家公務員の時限的な給与削減の給与改定特例法による措置が無いとした場合の値です。
区分 | ラスパイレス指数 | 参考値 |
全地方公共団体 | 107.0 | 98.9 |
都道府県 | 107.5 | 99.3 |
市区町村 (指定都市含み) | 106.8 | 98.7 |
指定都市 | 109.3 | 101.1 |
市 | 106.9 | 98.8 |
町村 | 103.3 | 95.5 |
特別区 | 108.3 | 100.1 |